三鷹の夜

生まれてこのかた、”ボーナス”というのをもらった事がない。

憧れて入った音楽業界だが、支払いに関してはまったく日雇い労働みたいなもので、働いたら働いた分だけ、毎月自分でせっせと請求書を書き、『とっ払い』なんて胡散臭い業界用語でギャラが支払われる事もあるし、ギャラをもらう前に事務所が倒産しちゃって泣き寝入り数十万円、、なんて事も一度や二度じゃない。

特にJazzの世界では、『チャージバック』なんていう音楽を仕事として認めていないような凄い支払い制度もあって、とにかく、安定したお給料なんてのはずっと遠い世界の話だった。

 

季節のボーナスとか有給休暇とかまったく縁が無かったから、OLの友人の話しを聞くたびに、「働かなくてもお金もらえるの? 」なんて素晴らしい制度なんだ~!、好奇心と羨望はふくらんでいった(笑)。

”有給休暇”はまぁ完全に無理だけど、”ボーナスをもらう”ってのは一度ぐらい経験してみたいなぁ、、日本のボーナスシーズン、バーゲンセールに旅行にグルメ! 国民みんなが嬉しくて浮かれる時期なんだよなぁ、、なんて思って、ある日、銀行に行って6ヵ月定期を申し込んだ。

毎月積み立てて6ヵ月後、ボーナスシーズンにちゃんとお金はもらったけど、何だかちっとも嬉しくない。だってもともと自分のお金だしもらう相手は銀行だし....。やっぱこれって全然ボーナスじゃないじゃん(泣)!。

 

こんな昔話を、三鷹Sonidoのセッションの時にぼそっと言ったら、心優しいJazzMan・M氏が「ボーナスが出たら、みんなで美味しいものをご馳走してあげよう!」と慰めてくれた。

 

土曜日夜の三鷹駅前、お寿司屋さんの2階座敷、M氏主催でSonido・セッション常連のJazzMen7人が集まった。

「ボーナスもらえない可哀相なミュージシャン・みっちゃんに美味しいものを食べさせてあげよう!」ってな趣旨はおそらくM氏一人の胸の内で、ほぼみんな、M氏主催の飲み会で美味いもの食べて盛上がろうって心積もりだったと思うが、集まったみんなの顔を見ていたら何だかちょっと感動した。

Jazzを何よりも真摯に愛するプレーヤーたち、忙しい日常のわずかな時間を見つけてこつこつと練習を積み、試行錯誤を重ねながら楽器やフレーズを研究し、少しでも良い演奏を目指して努力を惜しまない人たち。

セッションは言わば遊びだけれど、こういう人たちの真面目で誠実な気持ちがあって初めて上質なものになっていくんだと思った。Sonido・セッションはすっごく恵まれているよなぁ....。

 

八海山もお魚もお蕎麦もすべて信じられないくらい美味しくて、M氏を始め、心優しいJazzMenたちに本当に感謝・感謝。ありがとうございました。

七月土曜の三鷹の夜は、最高に嬉しいボーナスだった。

 

後日、バッグの中からお店で借りた携帯の充電器が出て来て青くなった。自分のと勘違いしてうっかり持って帰って来てしまった....。

お菓子を持ってお店に返しに行った。

いっつも最後になんかポカやっちゃうなぁ、私....。