”ゴキッ”

ここ2ヶ月ほど続いた左腕のしびれが、ようやく治ってきた。

ギターのH氏がメールで詳細に教えてくれたストレッチ体操を毎日やって、駅前の整骨院にも頻繁に通った。 

一時は、常時続くしびれにもうしょうがないのかなぁと半分諦めていたから、最近その症状を時折忘れる時があって、もしこのまま完全に治れば本当に嬉しい。

 

整骨院では、たくさんいる先生たちがカルテみたいなのをその都度確認して治療してくれる。

いろいろな先生がいて、優しく肩全体のコリをほぐしてくれる先生、集中的に力技で左腕をマッサージする先生、腰まで及んで身体のゆがみを指摘してくれる先生、それぞれ症状についておっしゃる事を聞いて、”なるほど....”と思う。

つまるところ、人体というのは機械と同じでメンテナンスが必要なのだ。ねじが緩んだりきつくなり過ぎたり、潤滑油がつまったり接続部分がずれたりして不具合が生じる。

 

ある日、初めての先生が、「力を抜いて息を吐いて下さい。」といって私の頭を持ち上げたので、「もしかして、”ゴキッ”てやるんですか?」と聞いたら、「はい、、。イヤですか?」と言うので、「絶対駄目です....!」と叫んだ。

ホラー映画『呪怨』で、妻の裏切りで狂気に陥った夫が奥さんの首を”ゴキッと”やっちゃう場面が目の前に浮かんだ。

だいたい、ホラー映画ファンというのは、物事を悪い方×悪い方に考えがちだ(笑)。

暗い部屋の片隅に誰か悲しげに佇んでいるとか、高度10000メートルの飛行機の翼の端に何かがしがみついているとか、深夜のタクシーの運転手が怯えて後ろを振り返りながら「この道、さっきから何回も走りましたよね?」と言うとか、最恐最怖最悪の場面を、旅館や移動中の機内やタクシーの車内で何故かぼうっと思い浮かべてしまう。

 

整骨院の治療ベッドの上でそんな妄想にかられた私は、不思議そうな顔の先生に「すみません....。」と謝ったのだが、後から考えて全く大人げない!とも思ったので、しばらくしてもう一度その先生に当たった時、”ゴキッ”ていうのを勇気を振り絞ってやってもらった。

すると、何だか随分と肩と首が軽くなった。徐々に治ってきたしびれに決定打!みたいな感じだった。

なぁんだ、もっと早くやってもらえば良かった、、。

 

それにしても、『呪怨』の旦那さんの”ゴキッ”と、整骨院の先生の”ゴキッ”と、何が違うかといえばいわゆる加減てことなのだろうが、どこらへんがその境か、、なんて考えだすと、やはり「恐ろしいなぁ.....。」とぶるっと震えてしまう。

背筋の凍るようなホラー映画は大好きなのに、この情けない怯え方は自分の事ながらなかなか興味深い現象である(笑)。