エゾシカ-Part1-

幼馴染みで高校の同級生・K氏は、生まれ育った新潟市の事ならほとんど何でも知っている。

「すごいねぇ、、。」と尊敬すると、「何年ここに住んでると思うのよ。」と笑う。

私なんぞ東京に◯十年住んでいても、東京タワーにもスカイツリーにも登ったことがない。

そのK氏が、新潟・古町にある高級串揚げ屋さんに連れていってくれた。

 

大通りから抜けて狭い路地に入ると、こじんまりとちょっとお洒落な小料理屋さんや割烹・飲み屋さんが軒を連ねる。古町は、粋で風情があって大好きな街だ。

その串揚げ屋さんも垢抜けた店構えで、ちょっとお寿司屋さんみたいだなと思った。

 

店に入ってコの字型カウンターの席に座ると、小柄な店長さんが、丁寧に下ごしらえした野菜や肉・魚などの食材を目の前で次々に揚げてくれる。

こちらのペースを見ながら、絶妙なタイミングだ。

冷えたお酒を飲みながらK氏と話をするその合間に、一品一品、食材の説明と食べ方( 塩で、タレで、そのままで、とか....)をちょこっとつぶやきながら、カウンター越しに置いていく。

 

「アスパラです。」

「甘鯛です。」

「蓮根です。」

「村上牛です。そのままでどうぞ。」

 

そんな至福のひと時を過ごしていたら、店長さんがぼそっとつぶやいた。

 

「エゾシカです。タレで、、。」

 

ふむふむ、エゾシカね....、え、エゾシカ?、、エゾシカって、、あのエゾシカ?隣りのK氏は、別段何事もなく美味しそうに食べている。

 

極寒の北海道の冬。

人里離れ、見渡す限り雪と樹木だけの山野を背にしてこちらを静かに見つめる一頭の『エゾシカ』。

その神々しいまでに威厳ある姿が目の前にぽっと浮かんだ。

カレンダーや旅行雑誌のカラー写真でよく見るあのショットだ。


「エゾシカは食材で普通にあるんですか?」と聞いたら、

「はい。」とそっけなく言われて終わりだったので、それ以上は聞かず、雑念(笑)を払って初めての味を楽しむ事にした。

 

翌日、やはりどうにも気になって、インターネットで調べてみた。

”北海道のエゾシカくんたちは、今いったいどうなっているんだ?”

 

『エゾシカ』で検索すると、Wikipediaの説明文の次に『北海道でエゾシカが増えすぎて困っている件』というブログの記事がど〜んとあった。

それによると、、。

 

・北海道では、増えすぎたエゾシカが農作物や森林の樹皮を食い尽くして、甚大な被害がでている。

・エゾシカ出没による交通事故や列車事故も頻発している。

・こんなにエゾシカが増えてしまったのは、捕食者であった狼を人間が絶滅させてしまったから。

・「再び狼を野に放とう」という動きもある。( アメリカのイエローストーン公園での成功例あり。)

・しかし慎重論もあり、代わりに進んでいるのが「食肉としてのエゾシカ」である。(『エゾシカ食肉事業協同組合』)

 

ふむ、なるほど、、。

それで、北海道のエゾシカくんが、新潟・古町の高級串揚げ屋さんの冷蔵庫に入ることになったわけだ、、。

 

 

実は先日、これも新潟での話なのだが、『鯨汁(くじらじる)』という郷土料理を初めて食べた。

夏の定番料理ということだが、我が家では何故か一度も食卓に上らなかった。

新潟大学の数十年ぶりの同窓会で行った老舗料亭で出されたのだが、鯨がこんなに美味しいものだとは、日本人なのに-新潟人なのに-ちっとも知らなかった。

( 昔、給食で食べた鯨の竜田揚げが本当の『鯨』だと思ってはいけない -_-:: 。

あれはあれでけっこう好きだったけど....。)

 

捕鯨についてはいろいろ議論がある。

一方的に日本が悪者にされている感じだが....。

外国人が言う”捕鯨は残酷な悪行”って本当だろうか?

 

エゾシカと鯨、”動物を食べる”という事についてちょっと考えたくなった。

 

***Part2に続く***

 

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コメント: 1
  • #1

    ぅぉ (金曜日, 16 9月 2016 05:22)

    えっ! 給食の鯨の竜田揚げは鯨じゃなかったの。
    知らなかった。 好きだったけどなー。

     あと、子供の頃は、皮鯨って言うほぼ油の部分を
    粕汁に入れたのを食べた記憶がある。

     捕鯨は残酷って、私は同じ人間を肌の色が違うってだけで
    手足を縛って鉄道のレールの上に寝かすような国の人に言わ
    れる筋合いはないと思っております。