2017年

1月

04日

こうと汁

新年の朝は、『こうと汁』でお雑煮だ。

『こうと汁』というのは新潟の郷土料理で、大根・人参・牛蒡・長ネギなどの野菜と豚肉や鮭、油揚げや焼き豆腐その他たくさんの具材をしょうゆ味で煮た、言わば”和風実だくさんスープ”だ。

 

その中に焼き餅を入れるのが我が家のお正月で、今は亡き母が”味付け監督役”だった。

「甘い」「しょっぱい」「味がない」「ん〜なんか違う、、」となかなか厳しくて、母がテレビを見ている居間と台所を、汁を入れた小皿を捧げ持って私が往復する、というのが大晦日の恒例だった。

 

新潟ではどこの家でも、お正月は『こうと汁』なのだと固く信じていた。

 

       (クックパッドより)


昨年11月某日@新潟。

気の合う高校の同級生三人と、駅前の小粋な料理屋さんで飲み会をやった。

 

仕事帰りの一杯ってことで、わたし以外はみんな働くビジネスマン。

なんとも頼もしいオーラが出ていて、日本の未来のためにひとつよろしくと、自由気ままに音楽なんぞやっている私には、自然に頭が下がる思いがした。

ビールで乾杯の後、突き出しの皿の中にあった塩焼きの銀杏をつまんだ。

 

私「銀杏、美味しいねぇ。」

A君「うん、家のそばに、秋になると銀杏の実がいっぱい落ちるんさね。その実がほんと臭くてさ。」

B君「そうそう、俺んちもいっぱい落ちてる。」

C君「銀杏の実ってのは?」

A・B君「今食べてるこの銀杏は、梅干しの種の中身みたいなもんでさ、この殻の周りに実がついてるわけよ。その実ってのは、見てたらカラスも食べないんだよね。」

C君・私「ふ〜ん。そうなんだぁ。」

 

実を言うと私は、苺は木に生って、トマトは地ベタで育つとかずっと思っていた稀に見る無知なヤツで、銀杏について知らないのが私一人じゃなかった事に、内心ちょっとほっとしていた。

 

だいたいこういう場合( 特に相手が親しい友達の場合 )

「えぇ?うっそ〜!」

「苺が木に生るとか、信じらんない。え、マジ?」

なんてリアクションになる可能性もあるので、C君の存在は大変心強かった。

( A君もB君も優しいので、そんな心配はほとんどないのだが....。)

 

イチョウとカラスについての新知識を得てちょっと気を良くした私は、銀杏の横の、香ばしく焼きあがった秋鮭に箸を伸ばしながら言った。

 

私「うちはさぁ、お正月の『こうと汁』にも銀杏、入れるんだよ。」

A君「……。」

B君「……。」

C君「……。」

私「え?『こうと汁』に入れない?銀杏、、。」

C君「えぇと....、みっちゃんちは、お正月に『こうとじる』というものを食べるんだね?」

私「え〜っ !? みんなんち( みんなの”うち”の省略形 )は食べないの?」

 

めちゃくちゃ焦って、一人パクパクパニクる私。

新潟のお正月は『こうと汁』で決まりなんではなかったのか、、よそんち(よその”うち”の省略形 )はいったいお雑煮を何で食べているのだ?

うちや、うちの親戚は、新潟でも”変わったうち”だったのか?

 

C君「( スマホを見ながら )ほんとだ、、。『こうと汁』、、グーグルに出てる。大根、ゴボウ、人参、油揚げ、、。」

A・B君「それはうちで毎年食べてる。」

C君「うちも....。」

 

早い話が、A君もB君もC君も、今まで毎年お正月に食べてきたものが『こうと汁』というものである事を知らなかったのだ。

「そういう名前の食べ物だったんだねぇ、、。」で、一件落着。

あ〜良かった....(汗)。うちは一般的な新潟の家庭であったのだ....。

 

後でインターネットで調べてみたら、この名称はあまり一般的ではなく、『こうとう汁』と呼ぶ地域もあるようだ。

『こうと汁』の名前の由来も不明。

逆に、うちではどうして『こうと汁』の呼称が定着していたんだろうか?

 

因みに、C君は、私が連呼した『こうと汁』が”コートジュルメ”とかに聞こえて、みっちゃんちはお正月にフランス料理を食べるんだぁ....、と思ったらしい。

これにはみんな大笑いだった ^ ^ 。