花火大会

7月29日の隅田川花火大会。

あいにくの雨にもかかわらず74万8000人もの見物客が訪れ、傘をさしながら壮大な花火ショーを楽しんだそうだ。

 

何年か前の隅田川花火大会の日のことを思い出した。


たまたまその日は浅草にあるライブハウスで仕事があって、夕方ちょっと早めに出かけた。

浅草駅前は大変な人出だろうと覚悟はしていたが、とにかく物凄いことになっていた。

 

都営浅草線のホームや車内には、可愛らしい浴衣を着た若い女性があちこちにいて、あぁ、今日は花火大会なんだよなぁ、、なんて微笑みながら眺めていた。

ふんふんとのん気に地下鉄の階段を上って地上に出たとたん、あまりのたくさんの人にくらっと来た。

見渡す限りの人の海に圧倒され、足を踏み出すのが怖いくらいだ。

「負けないぞ〜」気合いを入れると、脳内にアドレナリンがドッと分泌された気がした。

 

拡声器からお巡りさんの声がガァガァ聞こえる。

「止まらないで下さい。止まらないで下さい。前に進んで下さい。」

いや、そっちに行くとライブハウスに行けないんだけど、と思いながらも、ぎゅうぎゅう詰めの人の波に押され流され、まるで川下りだ。どこまで行くんだと不安になっても、なかなか列の端にも行けない。
しばらく行ったところでようやく人波から逃れて、大回りして仕事先のライブハウスにたどり着いた。
いつもの落ち着いた空気に戻って楽屋でほっと一息ついていると、共演者たちがぽつぽつとやって来た。
窓の外を見ながら「花火、見えるかねぇ?」と言い合ったが、どうも方角的に無理らしい。どっちにしろ、演奏時間中だから花火は見れないんだが、、。

 

そして数時間後。

仕事帰りに、”つわものどもが夢の跡....”みたいな大通りをぶらぶら歩いた。(全車両通行止めだ。)

花火大会は既に終わっていて、手をつないだカップルや帰りがけの家族、ファストフード店から出てくる若者たちが、三々五々歩いている。

近くのレストランが、大テーブルと椅子を数脚運び出して宴会をやったようで、大通りの真ん中にオブジェのように放置されていた。こういう花火見物のやり方もあるんだなぁ、と少し驚いた。

 

帰りの駅は、これまた物凄いことになっていた。

切符売り場もごった返していたが、電車に乗るにも勇気がいる。

すくまで待っていたらいつ帰れるかわからないので、周りの大勢の人たちと一緒にえいやっと乗り込んだ。

 

車内はそれでも、お祭りの雰囲気がそのまま持ち込まれたようにどこかうきうきと楽しげだ。

ぎっしり詰め込まれた乗客たちも、混雑にいらいらする様子はない。夏特有の明るい空気が流れていた。

 

周りを見回していたら、近くにいた外人さんが青い顔をしていた。

朝の通勤電車並みの車内にショックを受けたのかな、と思って見つめたら、「次の駅、降りられない」みたいな事を言っている。

私は「大丈夫。」と請け合って、次の駅に着くとすぐ「降りま〜す‼︎」と大声で叫んだ。そして外人さんの背中を出口の方にぐいと押し出すと、みんな少しよけて彼をなんとか通してくれた。

無事に降りられたみたいなので安心して、つり革をつかみながらぼっと思った。

東京に長くいる私にとっても今日の人混みは特に凄かったから、観光で来たらしいあの外人さんにはさぞ大変な一日だったろう、、。ちょっと同情した。

そして、浅草にいて花火をちょっとも見れなかった私も、なかなか残念なことだった。

 

今日、商店街の八百屋さんに行ったら、お店のお兄さんが真っ黒に日焼けしていたので「海に行ったね?」とからかうように聞いた。

「海、行きました!いやぁ、海、いっすよね。」

「でも人がいっぱいでしょ?」

「人混み、だめなんですか?」

「そうね、人混みはね、、。前に浅草の花火大会に行ったけどもの凄くてね、、。」(さすがに花火を見てないとは言えない・笑)

「隅田川花火大会!俺も行きましたよ。もぅ〜はんぱないっすよね、帰る時なんか大勢でずいぶん歩いて、、。もう二度と行かないっす!」

彼はレジを打ちながらきっぱり言った。

 

私にとっては、海も花火大会も同じようなもんなのだが、リミッターレベルが高い彼でも隅田川は相当だったらしい。

恐るべし、、。

 

人がたくさん集まるイベントはきっと楽しい筈なのだけれど、私のように人混みが苦手だと覚悟と気力がいる。

でも、そんな事を言っていると、そのうち博物館か図書館しか行かなくなるぞとも思うわけで、、。