恥ずかしながら....。この年になって生まれて初めて、土瓶蒸しというものを食べた。
(土瓶蒸し:蒸し物料理の一つ。松茸、白身の魚などを土瓶に入れて蒸し煮にしたもの。by三省堂大辞林)
帰省した新潟で、某料亭の懐石コースで対面したのだが、”松茸を使った料理”くらいしか知らなかったから、期待は格別なかった。
運ばれてきた土瓶を前にどうやって食べるのか分からないでいたら、給仕の方が教えてくれた。
「こちらのお猪口にすだちをちょっと絞って、出汁を注いで召し上がってください。」
小さなお猪口から、馥郁たる秋の松茸が香る。
一口、味わった瞬間、なんとも言えない複雑な味わいにくらっとした。
初めての味わい、、。
人間、あんまり驚くと言葉が出てこないものだ。
「う〜。。」と唸ったきり、黙々と味覚と嗅覚に集中した。
後日、数年来の友人に会った時に、その感動をなんとか伝えようと思った。
土瓶蒸しという料理が、どれほど凄いものなのか(笑)!
「もうね、ほんとにねぇ、こう、ぱぁ〜っと口の中に出汁と松茸とお魚のねぇ、、。」
ボキャブラリーの絶望的な貧しさに我ながら焦りつつ、それでもあの信じられない興奮を少しでも分かってもらおうと、必死にあ〜だこ〜だと頑張る。
因みに、彼女は土瓶蒸しを食べた事がない。
そして、土瓶蒸しの外見は明らかにぱっとしない。地味である。
視覚的に訴える要素がほとんど無いのだ。
相手は、私の大変な熱意だけを理解する。
にっこり笑いながら、
「ふ〜ん、そう、、。そりゃ良かったね。」
「…。」
ふっと我にかえって、何やってんだ、私。これじゃあ相手を羨ましがらせているだけじゃないか、、。がっくりしながら思った。
最近、インターネットで良く見る保守の論客・有本香さんと石平さん。
有本さんは、小池都政やロヒンギャ問題、国際政治にとても詳しい。
石平さんは中国生まれの中国人だが、1989年の天安門事件で中国の政治体制に絶望し、2007年、帰化して日本国籍になった。
二人はいつも、舌鋒鋭く日本や世界の情勢を語るのだが、ある日の楽屋での雑談が面白かった。
「有本さん、旅先で食べた美味しい食事の写真、なんでわざわざメールで私に送ってくるか? 私、食べられないのに、頭くるよ。」
「え〜、だって、あれ、ほんとに美味しかったんですよ。」
石平さん、まさに正論です。
美味しいものは、視覚や聴覚では少しも共有できない。
どんなに説明されても目の前に何枚写真を並べられても、同じものを食べてみない限り、「だから何?!」なのだ。
石平さんは、みんなが感じてもなかなか口に出さない本音を正直に言って、本気で怒っていた(笑)。
「あの店の土瓶蒸し、食べた?」
「うん。あれは絶品。」
「そうそう、あの出汁の塩加減がね、、。」
料理については、こういうのが正しい。
相手に、「ふ〜ん、そう、、。そりゃ良かったね。」と言わせたなら、こちらは「今度、ご馳走しますよ。」とまで言う覚悟を決めないといけない。
土瓶蒸しは、そんな人生の教訓(笑)を考えさせる本当に凄い料理なのだった。
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Caroline (日曜日, 12 11月 2017 16:17)
出汁の美味さって、わかる人にしかわからないと思うのよ。一緒に食べてみてもね。土瓶蒸しなんて、好きな人からしたらもう至福の逸品だけれども、わかんない人には無駄に高くてお腹いっぱいにならない食べ物じゃないかしらね。わかるってのは変な意味じゃなくて、そこんとこの味覚のセンサーが発達してるってぐらいの意味ね。
ちなみに、あたしは死ぬ前に食べたい食べ物は「お吸物」なんで、土瓶蒸しは大好物!
みっちゃんの投稿見ただけで、鼻の奥が芳しい感じになってるわ(≧∇≦)
michiko (日曜日, 12 11月 2017 16:52)
キャロちゃん、そっかも!
出汁の美味しさも松茸の香りも、もしかしたら日本人の古来の味覚センサーにビシバシ引っかかるもので、生活習慣が違うともうダメかもしんないね。
秋の虫の鳴き声みたいなものか、、。
お吸い物は、ほんと究極だね^ ^
Caroline (日曜日, 12 11月 2017 17:12)
西洋にもブイヨンとかあるし「旨味」の感覚はあるんだそう。でも、日本人突出していると思う。幼少期の食習慣で、センサーの感度はだいぶ違って来るみたいだよ。
どんな食べ物が好きかは人それぞれで、身体を壊したりしなければ、自分が美味しいと思うものを食べればいいと思うけど、お吸物をわかってくれない人とは、多分わかり合えないような気がしてしまう(^_^;)
michiko (日曜日, 12 11月 2017 17:28)
キャロちゃん、ウケるwww
ぅぉ (日曜日, 12 11月 2017 18:21)
五基本味のうち、うま味を発見したのは日本人ですからね。
とは言え、そのうま味を説明するのは日本人でも難しいと思う。
なので、TVとかの食レポなんかで、『やさしいあじ~っ!』で
ごまかすレポーターが居るのでしょうよ。w
ま、私は舌バカなので色んな事わかってませんが。w
michiko (日曜日, 12 11月 2017 19:02)
『やさしいあじ~っ!』よく聞きます ^o^ レポーターの説明、よく分かんないですけど...(笑)。
やっぱり、うま味関連の説明は難しいですよね。
美味しい!と叫ぶか、黙々と集中するしかないです。
Caroline (日曜日, 12 11月 2017 19:12)
やさしい味、うん、確かにウソじゃないよ(u_u)