ポワロ -Part5-

降霊術というと、日本の場合はこっくりさんとかイタコを思い浮かべる。

欧米では、ミディアムと呼ばれるプロフェッショナルの霊媒と出席者たちが、手をつないでテーブルを囲む。

『インシディアス』とか、最近のホラー映画でもその場面が出てくるから、現在でも普通(?)に行われているようだ。まぁ一部だと思うけど、、。

 


探偵小説にとって、降霊術は反則中の反則だ。

なにせ、殺された被害者が「私は◯◯にやられました。」なんて教えてくれるなら、捜査も推理もいらない。

ポワロ作品には、この降霊術がけっこう登場する。

もちろん犯人を教えてくれるのではなく、犯人を動揺させて自白に導く手段なのだが、イギリス人が日本人と同じくらい幽霊とか怪奇現象が大好きで、交霊会が当時の流行りだった事を考えると、クリスティのサービス精神や茶目っ気を感じてしまう。

 

彼女は、いろいろと推理小説の反則をやっている。

『アクロイド殺人事件(1926年発表)』は読者たちの度肝を抜いて大変な評判になった。

1928年にノックスという作家が「ノックスの十戒」という推理小説のルールを発表しているが、これは『アクロイド殺人事件』を読んで、よっぽど「これはいかん!反則だ!」と思ったからに違いない。

 

*ノックスの十戒 ( Wikipediaより )

 1.犯人は物語の当初に登場していなければならない

 2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない

 3.犯行現場に秘密に抜け穴・通路が二つ以上あってはならない

 4.未発見の毒薬、難解な科学的証明を要する機械を犯行に用いてはならない

 5.中国人を登場させてはならない

 6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない

 7.変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない

 8.探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない

 9.サイドキック(探偵の助手となる者、いわゆるワトスン役のこと)は自分の判断を全て読者に知らせねばならない

10.双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない

 

5番が笑える、、。

フー・マンチューのような万能の怪人のことを指す、と注釈にあったけど。

(イギリスの作家サックス・ローマーが創造した架空の中国人)

 


1934年に発表された『オリエント急行殺人事件』では、「ノックスの十戒」の裏をかいて見事に大反則をやらかした。

発表時、賛否両論をまき起こしたようだが、現在ではミステリー史に残る傑作の評価を得て、何度もドラマ・映画化されている。

彼女の”してやったり!”な得意顔が目に浮かぶ。

この作品については、また改めていっぱい(笑)書きたい。

 

ポワロ作品の他にも、『そして誰もいなくなった』や『検察側の証人』など、探偵は出てこないが意外な結末の名作がたくさんある。

アガサ・クリスティーという作家は、読者には驚きと喜びを与え批評家には”あかんべえ”をやる、まさに気骨と皮肉精神にあふれた生粋の『英国人』だったんじゃないかと思う。

 

***Part6に続く***

 

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コメント: 5
  • #1

    ぅぉ (日曜日, 18 11月 2018 09:19)

    魔法陣描いて呼び出すのは降霊術ではないのですね。
    いゃ、田崎さんのホラー好きの原点はこう言う所なのでしょうか。

     私はホラーは見ない主義(怖いから)ですが、この秋見た映画3本中
    2本は幽霊(片方は厳密には幽霊と呼ぶものではなくあやかしですが)が
    出てきます。 なんでやねん!   ちなみに、TVのものは今期の鬼太郎も見て
    ます。(はい、こちらは声優さん目当てですがw)

     私はこう言うミステリーは読めてませんが、日本のドラマでは犯人を初めに
    出さない所か、犯行の一部始終を見せてから、謎を解明する人がどうやって
    解明して犯人を落とすか ってお話もちょいちょい見かけますね。

     万能の怪人って意味では、出演者と言うより、右京さん的(主人公)な人が
    それでは? と思うのですが。  なんだ!ただの天才かっ!ってあれです。
    日本じゃアニメでそう言ったひとが結構出てきますね。

  • #2

    michiko (日曜日, 18 11月 2018 10:22)

    ぅぉさん、いつもコメントありがとうございます!
    怖い...とかいって、私より怪奇ものたくさん知ってますね ^ ^

    魔法陣って、床に図形かいて儀式みたいなのをやるやつかな?
    それはたぶん、降霊の相手が悪魔か魔界のものだと思います。
    イギリスで流行っていたのは、死んだお母さんや息子と話をしたい人たちの交霊会です。コナン・ドイルが晩年にいろいろ書いています。
    悪魔ものは、また違うジャンルですね。でもある意味、降霊術かな?

    犯行を最初に見せちゃうのは、コロンボとか古畑任三郎とか、人気ありましたね。
    いわゆる”倒敘もの”は、1934年のクロフツ『クロイドン発12時30分』なんかが有名です。古典ミステリーはたくさん読んだんですが、もうほとんどストーリ、忘れちゃってます....w

    Dr.フーは欧米では人気者みたいで、B級SFとかで昔よく見かけたような、、。右京さんも確かに怪しい(笑)人ですね!

  • #3

    ぅぉ (日曜日, 18 11月 2018 13:20)

    ファンタジーの世界では、魔法が普通に使われてて、悪魔を降臨させてその力を
    借りて街一個吹っ飛ばすなんてのもありますしw 科学と交わらせ、武力として
    使うものとか。そう言うのは魔法陣は地面に描きません。宙に浮いて出てきます。
    光る図形文字的なものが。    錬金術とかも(耳にされたことはあるかも
    知れませんが)ありますよ。 錬金術は亡くなった方を蘇らせようとか。
    それは禁忌とされてて、主人公はひどい目に会う的な。

     この秋見た2本は、一つは先日お話しました「夏目友人帳」です。 もう1本は
    「若おかみは小学生!」って子供向けアニメです。 泣きます。すごく泣きます。w
    と言うわけなのでいろいろ知っている訳ではありません。

  • #4

    michiko (金曜日, 23 11月 2018 10:21)

    ぅぉさん、キャパ広い〜。ファンタジーは『ロード・オブ・ザ・リング』で終わっちゃいました。あ、『12国記』はけっこうはまったなぁ、、。

  • #5

    ぅぉ (日曜日, 25 11月 2018 10:57)

    流石 田崎さん 守備範囲外の作品も、グローバルで通用するものを読まれてますね。
    私はこの年になってもラノベやラノベに毛が生えた程度のものしか読んでませんし、
    映像化されてるものも、そのレベルのものです。  ちゃんとしたもの特に映画は最近
    見始めたところです。  本は名作は読んでないと言って過言ではないレベル。
    高瀬舟読んだの先日ですしw