令和元年

十連休も最終日となった56日。

朝ご飯を食べながらインターネット番組を見ていたら、司会者とゲストが和やかに話していた。

 

「〇〇さん、この連休中に令和を実感する機会はありましたか?」

「いやぁ、住民票を取りに行くとかしないと、あんまりそういう機会ってないですねぇ。」

 

う~む、私は昨日、めっちゃめちゃ実感した、、。

 

55日、午前10時半頃。

 

朝からぴっかり晴れて、散歩日和の爽やかな空気が気持ち良い。

家から歩いて数分の所にある交番の中で、私は、初老のお巡りさんが出してくれた折りたたみ椅子に座っていた。

お巡りさんは事務机の向かい側に座ると、書類を一枚、差し出した。


「じゃあ、この黒い枠の中、書いてね。落としたのは財布?」

「はい、長財布です。昨日の夕方なんですけど、、。」

「昨日ね。じゃここに日付と時間。」「あ、そこ、”平成”消して”令和元年”って書いて。」

「ここ? はい、、。」

 

元年5日目にして、めでたく令和体験をした。

令和の祝福力があったせいか、落とした財布は、その日のうちに私の手元に戻ってきた。

拾ってくれた人に感謝しつつ、私もいつか、その恩返しになるような行いをしようと固く誓った。

 

そういう清々しい想いとは別に、デジャブのようなモヤモヤ感が心に暗く広がっていた。

実は、つい2ヶ月前の3月、同じ交番で遺失物届けを書いたのだ。

その時に失くしたのはスマホ。まだ平成だったから、このわずかの間に平成令和の改元実体験をした事になる。

なんとも情けない体験だが、さらに恐るべき事実が、、。

 

この1ヶ月後の4月、三鷹の居酒屋さんに、カードや運転免許証や鍵の入った大事な革のポーチを忘れた。

荷物入れに置いたカバンから、スルッとそれだけ落ちたらしい。

お店の人が保管してくれていて、私はお礼の菓子折りを持って受取りに行った。

 

その数日後、ずっと長年使っていたやかんの取っ手が、いきなりパカっと取れた。

外国製は信じられない壊れ方をする、、。

 

やかん以外は全てが元どおりになったのだが、これは幸運だったと喜んでいいんだろうか?

普段、めったに物を落とさないのにこれほど立て続けに落し物をして、さらに長年使っていたものがいきなり壊れた、、。

うぅ、、もの凄く不吉な予感が、、。

 

連休中にホラー映画を見過ぎたせいか、どうしても良くない方に考えが行ってしまう。

凶事の警告か、災難の予告か、、。

 

しかし世の中、良い人ばっかりだなぁ….と感激したのも事実で、壊れたやかんについては、もうちょっとここがこうなってれば、どうしてここが….なんて文句を言って使っていたから、やかんが可哀想にゲシュタルト崩壊したのかもしれない。

不吉な予感に怯えつつもどこかお気楽な気分なのは、やかん以外はただの不注意、年のせいでしょ、と囁やく意地悪な内なる声に「ごもっとも^ ^;; 」と半ば納得しているからだろう。

 

スマホ/カード・鍵/財布。

この、”私的三種の神器”のような物がほぼ同時期になくなって、そしてちゃんと手元に戻ってきたという事に、もし何か特別な意味があるとすれば、、。

 

見知らぬ人たちに助けてもらって、私は元どおりの生活をしている。

日本に住んでいるから、この奇跡のような事が起きたとも言える。( 南半球の某国で、スマホが腕ごと盗られるという超絶恐ろしい事件があったらしい・_・)

もっと考えれば、親や親戚や友人や知り合い、全て関わりのある人々に様々な形で助けてもらって、今、こうして生きている。良い国に生まれて、良い人たちに囲まれて、私は毎日を生きているのだ。

そういう大切な事を、最近、忘れていませんか? いい気になっていませんか?  一連の事件は、そう気付かせてくれたような気がする。

「めっ!」と叱られたような気がした。

 

私はきっと、とても貴重な経験をしたのだ。

不注意や年のせいもあるけれど、それ以上にとても意味のある出来事だったのだと思う。

 

、、まぁ、やかんについては、やっぱり、日頃の感謝が足りなかったのかもしれない、、うむ、、。

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コメント: 4
  • #1

    ぅぉ (土曜日, 11 5月 2019 19:35)

    あまりホラー、ホラーと煽り過ぎましたでしょうか。 ごめんなさい。

     そうそう、ゲシュタルト崩壊の使い方が何か違う気がします。
    時々、上念さんも使いますが、あの方も違っている気がします。 大した
    話ではないのですが。

  • #2

    michiko (日曜日, 12 5月 2019 06:07)

    さすがぅぉさん!
    ゲシュタルト崩壊をWiki.とかで調べてみたら、なんか思っていた意味と違っていました。
    なのでここは、上念さん的”ゲシュタルト崩壊”って事で、、。
    ネットの方でも、最近、間違った使われ方をしている、と意見している方がいて、上念さんの影響力凄い!とか思ったのですが、もしかして、間違い元ネタがあるのかも、、。

  • #3

    本間俊一 (金曜日, 07 6月 2019 14:40)

    三種の神器がお手元に戻り、本当に良かったですね。貴重なご経験と思います。

    pay it forwordという映画では、善意を順に送って、人々の間に好意の輪を広め、心の絆を求めるテーマが当時、評判を呼びました。
    このpay it forword、日本では珍しいことではなく、「お互い様」「陰徳を積む」という言葉に包含されると思います。そして、何よりmichikoさんの日ごろの行いが良かった証しですね。

    最近、山歩きで、他のことに気を取られて、大事な登山用ストックを置き忘れたことがあります。以後、忘れ物しないよう、心の中で、指差呼称して確認するよう努めています。

  • #4

    michiko (金曜日, 07 6月 2019 16:00)

    本間さん、いやぁ、michikoさんの日ごろの行いは、みんなのお世話になるばっかりで申し訳なく、ほんと頭がさがる思いです。
    だから神さまも、トリプルで注意しちゃった気がします(笑)。

    指差呼称!私も最近、してます!
    西武線の若い車掌さんを見ると、「お仲間ですね ^ ^ 」とニンマリ微笑んでしまいます。