父の料理 -Part2-

父は釣りが趣味だったので、時々、釣ってきたキスなどを捌いて天ぷらにしてくれた。

私は、釣り人というのは釣った魚をちゃんと料理して食べる人たちなのだと勝手に思っていたので、父が包丁を握るのを見ても当然と思っていた。

ついでに言えば、目覚まし時計なしで朝も暗いうちから起き出し、誰に頼まれた訳でもないのに何やら道具をいっぱいバイクの後ろに積んで、早朝何処かに一人で出かけて行く、、。

母や私とは全く違う行動目的を持つ人がいて、それが娘にとって一番身近な父であった結果、男性というのは不思議の人たちなのだという刷り込みがなされてしまったんじゃないかと思う(笑)。

親戚の家に行くと、父が料理をするという事にみんなが驚いて「みっちゃんのパパは凄い!」と言われたが、私にすれば、目覚まし時計なしで決めた時間に起きれるということの方が、数十倍凄いことのような気がした。

学校の遠足や行事でお弁当が要ると、父か母が時に応じて作ってくれた。

母の卵焼きは塩味のオムレツなのだが、父のは醤油が入っていて甘い。

どちらかと言えば父の卵焼きが好きで「パパ、お弁当作って。」とねだったような記憶がある。

日曜日の夜、家族で夕食の時に、

「これはパパが作った。」と、母がメインの一皿を指して言う。

「そうなの?! パパのはやっぱり美味しいねぇ。」とうっかり本音を言って、母に睨まれたこともあった。

 

母は、料理が下手だったのではない。

母の中華料理は、鶏ガラからスープをとるなどかなりものだったし、栄養学も独学であれこれ知っていて、何より食べるのが大好きな人だったので、ちゃんと作ると相当なものが出来た。

ただ”毎日”となると、手抜きも仕方ないのだ。

 

定年を機に、父が一家の家事を担う事になった。

一ヶ月の掃除計画を立て、タオル類の洗濯周期・ローテーションを決め、台所用品もいろいろ増えた。

( “油の温度計”というのを初めて見た!)

帰省した時に、台所の壁に貼られた『掃除スケジュール表』を眺めながら、

「パパ、台所の換気扇なんて、毎月掃除しなくていいんじゃないの?」と意見してみた。

父は頑固で、決めたことは最後までやる人だったから、脳梗塞で倒れる日までそのスケジュール表が変更されることはなかった。

 

父の定年の時に私はもう東京にいたので、その頃の家のことは詳しく知らない。

でも、味にうるさい母が下手な料理に黙っている筈がないと思われるので、きっと父は毎日、手を抜く事なく美味しいものを作り続けたのだ。

 

***Part3に続く***

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コメント: 4
  • #1

    本間俊一 (土曜日, 30 5月 2020 19:49)

    新潟のSekiya浜でも、ちょうどキスやアジの季節です。キスの天ぷらやアジのたたきはお酒のおつまみにぴったり。特に、温度管理してあげたキス天は最高でしょう。

    お掃除スケジュール表は参考になります。特に台所の換気扇掃除、難しいやりたくない事こそ、毎月のルーテインとすることが決め手かあ。

  • #2

    michiko (日曜日, 31 5月 2020 08:10)

    私なんて、スケジュール表はしょっちゅう作って、しょっちゅう変更なんですが、、(笑)。
    魚も切り身一択です(笑)!

    新潟弁では、”はつめ”って言うんですよね。父はまさに”はつめ”な人でした。

  • #3

    ぅぉ (月曜日, 01 6月 2020 13:50)

    魚を捌くことが出来るのもすごいけれど、釣った魚を手で掴んで針を外せるのも
    すごいし、そもそも、針にゴカイ等の餌を付けられるのもすごい。 私はどれも無理。

  • #4

    michiko (月曜日, 01 6月 2020 21:44)

    父と釣りに行きましたが、餌をつけるのも針を外すのも、全部やってもらったww。
    何が楽しいのかもさっぱり分からなかったけど、お菓子をたくさん買い込んで父の隣にずっと座ってました。