今までの事、これからの事 -Part2-

自分で言うのもなんだけど、私はけっこう努力家だ。

頑張ることは苦じゃない、と言うより、目標が目の前に現れると他が全く見えなくなってしまう。

にんじん馬みたいな習性なんだと思う。

 

そして、だいたいの目標は努力すれば何とかなる、とぼんやり信じていた。

 


ところが、Jazzの世界に入ったら、今までなんて甘かったんだろうと思い知らされた。

生半可の努力では、ピアノはちゃんと弾けないしJazzなどできない。

目標とする山の頂上はとてつもなく高く遠い-仕事を始めて暫くすると気が付いた。( 人参じゃなくてエベレストだった・笑)

何となく出来たような気になっていた期間は幸か不幸か短くて、以降ずっと、気分は低空飛行だ。

 

そしてもう一つ、最近になって気付いた。

 

エレクトーンを弾いていた頃、ツアーでシンセサイザーを弾いていた頃、コンピューターで音符を打ち込んでいた頃、ずっと心の中にもやもやと溜まっていた思いがある。

「本物の音楽をやりたい。」

 

電子音楽が偽物という意味ではなく、電子楽器もコンピューター音楽も大好きだった。

アルゴリズムから生まれる音、MIDIを駆使して作られるゴージャスなサウンド、、。

中でも、バンドで大きな舞台で演奏することは、本当に痺れるような快感だった。

なんて幸せな仕事だろう、と何度も思ったものだ。

でも、なんかいつも”もやもや”している、自信がない、私は本物じゃない、、。どこか後ろめたさを感じていた。

 

「本物の音楽をやりたい。」と考えたのはいつの事だったろう?

エレクトーンがシミレーションの楽器と悟った時か。

業界の”仕事”としての音楽と自分の中にある音楽を、はっきり区別して考えた時か。

クライアントに要求される音楽作りがいやになっちゃった時か。

単純に、そういう業界の仕事が減ってきて焦りを感じた時か。

 

ちょっとした遊び感覚で始めたJazzは、仕事のストレスから解放してくれるだけでなく音楽的にもレベルが高くて、それまで未知の分野だっただけに新鮮で楽しかった。

シンセサイザーやコンピューターから離れてアコースティックピアノの鍵盤に触れることは、ただただ嬉しかった、

そして、あるライブ演奏に感動したことがきっかけになって、Jazzなら本物の音楽ができるんじゃないかと漠然と思った。

 

”本物の音楽”とは何か。

と書き出したらまた止まらなくなるので、ここでは”自分にとっての本物”というふうに狭めて考えてみる。

 

自分の中の音をどう形にするか、どう表現するか-それに悩むということが、今の私にとっての本物かなと思う。

自己と話をする-いろいろ提案したり試したりダメ出しをしたりOKを出したり-そういう音楽的な作業をすること。

速弾きや高等技術の習得を目指すのではなく、自分の個性を見つけて伸ばすための地味な作業をずっと続けられればいいなぁと思う。飽きることなく、、。

その為に、Jazzという音楽形態が一番私に合っていると気付いた。

 

ビバップフレーズもブルーノートレーベルもほとんど興味が無いから、熱心なJazzファンにはめっちゃ怒られるだろうが、私はただ、Jazzのコードやリズムが好きだ。

即興性やコミュニケーション、自由でありながら基本のルールがちゃんとあること、古いものも新しいものも取り込んでいく大きさが好きだ。

そして、偉大なJazzプレーヤーたちの音楽を尊敬している。彼らは常に革新的だった。

 

改めて振り返ってみて、よくぞJazzに辿り着いたと思う。

”自分にとっての本物の音楽”をやる-そういう作業を続ける為の”方法”をようやく見つけたような気がしている。

数十年間の思い-願いが、知らないうちに今、叶っているのだとじわじわ感じる、、。

 

ただ、屹立するエベレストの前で、気分は依然として低空飛行だ(笑)。

努力することは嫌いじゃないけど、最近ちょっと疲れ気味、、。

昨年末に、自分のオリジナル曲をレコーディングするという最大級の幸運が降ってきて興奮状態がしばし続いたのだが、いささかガソリンが切れてきた。

自分の演奏を真正面から聴くというのも、精神的にかなり辛い、、(笑)。

 

これから何をやろうかな。

今までの延長線上なのは違いないのだが、少し気を抜いて生活も楽しみたいなぁ。( この事は、20代の頃から何度もアドバイスされたのにずっとできないで来た。要は貧乏性、、笑)

心が新しくならないと、新曲も作れないしアイディアも浮かばない。

だから、ゆっくり、また始めようと思っている。

 

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コメント: 13
  • #1

    ぅぉ (金曜日, 31 3月 2023 00:42)

    む、むずい

  • #2

    まっち (土曜日, 01 4月 2023 12:15)

    そうでしたか。
    私には、むしろ、ハードバップ等、いわゆる4ビートには大変通じている方の様に思われておりました。
    一般的な入り方とは異なりますが、結局のところジャズの方法論、手法にたどり着いたと云う事でしょうか?
    その入り方の方が、却って、遥かに困難なのではないでしょうか?それで、プロとなりCD発表まで成し遂げるのは驚き、非常に興味深いと思っております。
    ショーターもアメリカの一般的ミュージシャンとは違った入り方をしたと云われますが、それとも又全然違うのだろうと思います。

    結局、成果としてのアウトプット、CDがどの様なものか、大変楽しみにしておりますが、素人の私には解らない部分も多いと思えますので、お話等もお伺い出来れば有り難い事と思います。

  • #3

    michiko (日曜日, 02 4月 2023 19:28)

    ぅぉさん、まっちさん。
    それぞれの反応、ほんとありがとうございます。
    まっちさんのおっしゃる通り、私は入り方だけでなく向き合い方も、普通にJazzミュージシャンという括りで言うとめっちゃ外れてると思います。
    目指しているものが全く違うので、今でも全くJazz業界に馴染めてません...ww
    自分の音楽をやるにはJazzがいっかなぁ、、てな具合なので、ちゃんとしたファンにはもっと勉強しろ!と叱られるかもしれません。
    いや、きっと叱られる、、。Jazzファンは厳しい、、。
    今回、記事に書いたのは、やっと自分の中の音をどうやって外に出すかという方法を見つけた、それがほんと嬉しくて、これからもっと頑張ろう、でもゆっくりでいいかな、という事です。
    むずかったかもですが。
    私にとって、Jazzは手段かなぁと思います。最高の。

  • #4

    ぅぉ (日曜日, 02 4月 2023 20:34)

    こんなこと言うと何ですが、JAZZのリスナーとしては、私はにわかですから。

  • #5

    michiko (日曜日, 02 4月 2023 21:52)

    日本国民のほとんどが、にわかですらない...ww
    私も有名なミュージシャンしか知らなくて、反省するところです。

  • #6

    まっち (水曜日, 05 4月 2023 02:30)

    ジャズを聴き始めたのは、学生時代、半世紀以上前だからにわかでもないが、内容が伴わない。
    当時、ファッションとしてジャズを聞く事が流行っていた。渋谷、新宿等には、多数のレコードを聞かせるジャズ喫茶が有り、多くのお兄さん達がしかめっ面で悦に入っていた。評論雑誌などは、豪華な写真を載せ、美辞麗句を並べたてた記事は音楽とは無関係な、まるでアイドル系の雑誌の様なものも有りました。
    物凄い音痴の方が、多数のジャズミュージシャンを知っていると云う事も普通に有りました。

    私自身はどうだったかと云うと、結局のところ、ただマスコミやレコード会社等が発信する物を聞かされていただけの様で虚しいのです。
    残り少ない人生、サンバでも、演歌でも、唱歌童謡でも自分の歌いたいものを、少しでも上手くなりたいと思っています。

  • #7

    michiko (水曜日, 05 4月 2023 07:45)

    そんな時代があったんですね、、。(Jazzが人気があったと言う意味で。今では考えられない。)
    私は、”ツェッペリンとDeep PurpleとEL&P”命でした(笑)。
    その後、40歳になるまでマイルス知らなかったし、かろうじてエバンスとチックコリアは聞いたことがあった程度です。
    ベックは大好きだったので、先日の訃報は大ショックでした(涙)。

  • #8

    まっち (水曜日, 05 4月 2023 23:56)

    いや~、本当に遅くからのスタートなんですね。
    それで、ジャズミュージシャンになられてしまうのは驚異的です。又、凄い才能です。
    そうなる運命だったんでしょうかね。

  • #9

    michiko (木曜日, 06 4月 2023 06:16)

    最近じわじわと、運命かもって思います。
    歳をとって、人生ふりかえって見ちゃうってのもありますね、少し前までそんなふうに思ったことなかったですから。

  • #10

    ぅぉ (金曜日, 07 4月 2023 13:18)

    Jazz聴くようになったのは、おっさんになってから。ww
    勉強と称して、再録版の安いCDを何枚か買った中に、マイルスさんのも
    ありました。 かっこいい曲もあるなーと思いながら、ぴんと来ず、
    そのまま ずーっと来ておりましたが、
    RONNY JORDAN MEETS DJ KRUSH の BAD BROTHERS
    と言うCDをジャケ買いして聴いて、So Whatのかっこよさに
    びびった記憶が。  それくらい、ぼんくらでございます。私 ww

  • #11

    michiko (金曜日, 07 4月 2023 16:37)

    ぅぉさん、私もおんなじ!
    マイルスは全然ぴんと来ず、周りの友人たちが凄い凄いと言うので、なんか勉強しなくちゃって感じでした。( へ〜、これがJazzか、、と。)
    Jazzをちゃんとやりたいなぁと思ったのは、それからずっと後です。
    今回の私のCDも、まったく正統派Jazzじゃないです、、^ ^;;

  • #12

    ぅぉ (土曜日, 15 4月 2023 14:12)

    先日、アニメ映画 BLUE GIANTを見て来ました。
    絵に関する苦言は自分のBLOGにかきましたが、
    音楽について。よく分からんけど、アドリブが複雑な
    ものの方が偉いんかなぁ  とか
    小手先がそんなにあかんのかなぁ とか
    色々思う

    そして最近、偶然みたミートたけしさんというベーシスト
    のyoutube 動画見て JAZZってなんだろなー と思ってみたり

    むずかしなー

  • #13

    michiko (土曜日, 15 4月 2023 15:40)

    ぅぉさん、けっこう核心ついてるかも、、。
    難しそうなムード、醸し出してる方が高級とかね。
    コルトレーン時代をいまだに引きずってるのかな、ミュージシャンも聞く方も。