雑誌の写真・料理の写真

料理の写真を見るのが好きだ。

インターネットでよく見る”おかずのレシピ”写真ではなく、高級料亭や三つ星レストランの紹介記事で掲載される和食やコースメニューの写真が好きだ。

 

なぜ好きかと言えば、わぁ美味しそう!とか無性に食欲がわくとか実際にそのお店に行きたくなってしまうとか、そういうのでは全くない。

ただただ美しくて、自然と目を奪われてしまうという感じだ。

ふだん見慣れた食材が、卓越した職人の手によって鮮やかに姿を変え、それぞれ吟味された器に絵のように盛り付けられている。

ピリピリした緊張感が上品な匂いと共に伝わってくるようだ。

 

つい最近、気付いたのだが、料理の写真をスマホやPCモニターの画面で見るのと、ちゃんとした雑誌のツヤツヤ光沢のある紙面で見るのとでは大きな差がある。( まぁそう感じるのは私だけかもしれないんだけど、、。)

画像の緻密さで言えば、紙面に印刷する工程がない分、PCの方がより実物に近いんだろう。比べて見ても、より鮮明なような気がする。

でも、私は雑誌で見る写真の方が数倍好きだ。

風景や人物や雑貨とかの場合には特にそう感じないのだが、料理となると断然違う。  、、と思う。

 

某クレジットカード会社が毎月一冊、けっこう上質な情報雑誌を送ってくるのだが、今月の特集が『大阪』だった。

阪神タイガースの18年ぶりのリーグ優勝+38年ぶりの日本一や2025年の関西万博開催など、大阪は今話題の人気都市だ。

パラパラとページをめくっていて、ある写真で手が止まった。

 

『浪速の食は深くて、うまい』のキャッチコピーが載った見開きのページ。

地元で有名なカウンター割烹の板前さんが、真剣な表情で器に盛り付けをしている。隣りのページには、珠玉の一品料理の数々が簡単な説明文と一緒に掲載されていた。

全然豪華ではないけれど、間違いなく、板前さんの奇跡のような職人技による一品料理だ。

どのような奇跡か、説明文を読みながらなぜかドキドキした。

 

あんまり気に入ったので、外出する時はその雑誌をバッグに入れ、何日間か駅の待合室や空いた電車の中なんかでまじまじと眺めていた。

繰り返し言うが、食べてみたいからではなく、ただなんとなく見ていたいからだ。

 

、、これは一体、どうしてなんだろう? どうしてこれほど、料理の写真、それも雑誌掲載の写真に心惹かれるんだろう?

 

PC画面と雑誌の写真に関して言えば、オーディオマニアたちがよくCD派とLPレコード派で議論を戦わせている”空気感”とか、”温かみがある”とか、デジタル・アナログのテクニカル論とかの意味合いでは、どうもないらしい。

料理の、ということになると、もっと何か言葉にできない、懐かしさと言うか一生懸命さと言うか真摯な憧れと言うか、そんなバクっとしたものがごちゃ混ぜになった感覚があって、結局これという答えが出ないまま、数日過ぎた。

 

ほとんど忘れかけていた頃、いきなりピン!ときた。

 

あ〜、きっと私の前世は、ライカのカメラを手に1930年代-大戦前の世界を飛び回っていた趣味の写真家か、江戸時代に浪速大阪あたりの豪商に贅を尽くした料理をだしていた料亭の主人なんだな。

 

、、ん〜。

 

もっと時間が経って-もしかして再来年あたりに、またピン!と、もう少し納得のいく答えが出るような気もするが、今のところ、これが一番しっくりくるようだ。